適性検査を導入するかは、何を測り結果を何に使うかを決めてから判断します。限られた人手で採用を回し、導入を自分で決める中小・中堅企業の採用担当者・経営者に向けて、判断の基準と導入の順番、導入した日から自社に増える作業と法令上の義務をまとめました。
増えるのは費用だけではありません。ミスゼロ総研編集部が2026年11月4日に適性検査39件の公式サイトを調べたところ、障害のある受検者への配慮の手段まで書いていたのは39件中1件でした。
この記事の結論
- 適性検査を導入するかは、何を測り結果を何に使うかを決めてから判断します。 厚生労働省が求めているのは、採用基準を先に決め、結果だけで採否を決めないことです。埼玉労働局の資料も、選考では「資料として活用するにとどめてください」としています。
- 応募者の情報を適性検査サービスに渡して受検・採点を任せることは、原則として個人情報保護法の「委託」にあたります。 業務の範囲内なら第三者提供の同意は要りませんが、委託先を監督する義務(第25条)が自社にかかり、従業員100人以下の会社でも変わりません。
- 導入で増える採用企業側の作業時間は、検査サービスの公式サイトではほとんど公表されていません。 編集部が2026年9月16日に28件を調べると、分単位で公表していたのは28件中3件でした。GATB(T版)の採点・換算は1名約40分で、30名なら20時間です(編集部試算)。
- 障害のある応募者から申出があれば、過重な負担になる場合を除き、配慮は採用する企業の義務です。 合理的配慮指針は採用試験の配慮の例に試験時間の延長を挙げています。一方、編集部が2026年11月4日に39件の公式サイトを調べると、延長について書いていたのは39件中0件でした。
- 不採用者の結果は、使う必要がなくなったら遅滞なく消すよう努めます。 個人情報保護法は保存期間を定めていないので、消せる仕組みと消す時期は導入の時点で自社が決めます。
適性検査を導入するか:測るものと結果の使い道を決めてから判断する
適性検査を入れるかどうかは、測るものと結果の使い道が決まってから判断します。厚生労働省が、検査を選ぶ前に採用基準を明確にし、結果だけで採否を決めないよう求めているためです。
厚生労働省は「採用選考の具体的な方法」のページで、「あらかじめ、適性・能力に基づいた『採用基準』を明確化しておきましょう」としています。検査を選ぶ作業は、この基準が言葉になってから始まります。
結果の使い道も、検査を選ぶ前に決めておく事項です。埼玉労働局の採用選考の資料は、適性検査を採用後の「職場配置や教育訓練に必要な参考データを得るためのもの」と位置づけています。
同じ資料は、選考で使う場合は「資料として活用するにとどめてください」とし、「何の目的で使用するのか十分な検討をお願いします」とも書いています。選考の資料にとどめるのか、入社後の配属にも回すのかで、選ぶ検査も応募者への案内も変わります。
適性検査は自社に必要か:3つの条件で判断する
適性検査が自社に必要かは、他社の導入割合では決まりません。次の3つがそろっているかで判断します(判断の並べ方は編集部の整理です)。
- 採用基準のうち、検査で測る項目が言葉になっている
- 結果を選考の資料にとどめるのか、配属にも使うのかが決まっている
- 検査の実施・判定・活用を担える人が社内にいる、または提供元の解説を受けられる
3つ目は、厚生労働省の「採用選考自主点検資料」(令和8年度版)が、検査の「その実施・判定・活用に専門的な知識と経験が必要であること」を挙げている点に対応します。資格などの要件は示されていないので、提供元が結果の読み方の研修や問い合わせ窓口を用意しているかを確かめれば、判断の材料になります。
3つのうちどれかが欠けている会社は、いま導入しても結果を使いにくいため、検査を探す前にそこを埋めてください。採用基準の立て方は採用要件定義の作り方で解説しています。
適性検査を導入するメリット
適性検査を入れる利点は、応募者を同じ物差しで比べられることです(利点としての整理は編集部によるものです)。面接官ごとに見るところが違っても、検査の結果は全員が同じ問いに答えたものになります。
厚生労働省の「採用選考自主点検資料」は、適性検査を、応募者が求人職種の職務に「どの程度適性があるかを判断する際の参考として用いられることがあります」と説明しています。採否は「あらかじめ定められた基準にしたがって総合的に評価しましょう」とされており、検査はその評価の材料の1つです。
「適性検査 導入 メリット」「適性検査 導入 デメリット」で編集部が読んだ民間の5ページは、いずれもミスマッチの防止や離職の減少をメリットに挙げていましたが、どれも出典を示していませんでした。
編集部が当たった範囲では、導入で離職やミスマッチが減ることを示す公的データは確認できませんでした。そのため、この記事ではメリットとして挙げていません。
ミスマッチの原因が検査で測れるものかどうかは、採用ミスマッチが起きる5つの原因で切り分けられます。
適性検査を導入するデメリットと限界
厚生労働省の「採用選考自主点検資料」は、検査では「応募者の適性を完全につかむことはできない」と注意しています。結果は応募者の一面しか映さず、点数だけで適性を判断することはできません。
| メリット/デメリット | 何が起きるか | 根拠 |
|---|---|---|
| メリット | 応募者を同じ物差しで比べられる | 編集部の整理(厚生労働省「採用選考自主点検資料」の用途の説明を参照) |
| デメリット | 回答のコツを知っている応募者は、回答を調整できる場合がある | 厚生労働省「採用選考自主点検資料」 |
| デメリット | 応募者の適性を完全にはつかめない | 厚生労働省「採用選考自主点検資料」 |
| デメリット | 応募者に受検の時間がかかる。主な検査の公表値で約10分〜110分 | 編集部調べ(2026年9月16日、各社公式サイトの公表値) |
| デメリット | 案内・督促・採点・読み合わせに採用企業側の時間がかかる | この記事の「導入で増える負担」の章 |
厚生労働省は「適性検査等の結果を絶対視したり、うのみにしないようにしましょう」とし、埼玉労働局の資料も「その検査のみで特性を決めつけることの無いように細心の注意を払う必要があります」と書いています。点数は、面接や書類と並べて読む材料の1つです。
面接で何を確かめるかをそろえる手順の解説は、構造化面接の進め方の記事です。
適性検査の導入手順:基準づくりから結果の削除まで7段階
適性検査の導入は、基準づくり、候補を絞る、見積もり、検査サービスの確認と契約、受検案内、実施・採点、保管・削除の7段階で進めます。後ろの3段階は導入した後に毎回くり返す作業なので、契約の前に回し方を決めておきます。
| 段階 | やること | 根拠 | 詳しい解説 |
|---|---|---|---|
| 1 基準づくり | 測る適性・能力と、結果の使い道を決める | 厚生労働省(採用基準の明確化) | 採用要件定義の作り方 |
| 2 候補を絞る | 何を測るか、受け方、受検時間で候補を減らす | 編集部の整理 | 適性検査の比較 |
| 3 見積もり | 年間の受検人数で総額を出す | 編集部の整理 | 適性検査の料金相場 |
| 4 確認と契約 | 絞った候補に安全管理措置、委託の範囲、障害への配慮の手段を問い合わせ、契約に書く | 個人情報保護委員会のガイドライン、障害者雇用促進法 | この記事の「外部委託と個人情報」「障害のある応募者への配慮」の章 |
| 5 受検案内 | 何のために受けてもらうのかを応募者に示す | 職業安定法施行規則第4条の4 | この記事の「受検案内から削除まで」の章 |
| 6 実施・採点 | 受検の案内と督促、採点、結果の読み合わせ | 編集部の整理 | この記事の「導入で増える負担」の章 |
| 7 保管・削除 | 使う必要がなくなった結果を消す | 個人情報保護法第22条 | この記事の「受検案内から削除まで」の章 |
1から3の段階で候補を減らす比較の軸は、適性検査の比較で6つに分けて整理しています。自社の条件から候補を絞る質問は適性検査のおすすめは自社の条件で決まるにまとめました。
申し込んでから使えるまでの日数は、事前に読めないことがあります。ミスゼロ総研編集部が2026年9月16日に適性検査サービス28件の公式サイトを調べたところ、申込みから利用開始までの日数を書いていたのは28件中11件でした。
書いていないことは、遅いことを意味しません。内田クレペリン検査のオンライン判定のように、初回に講習会(1時間30分)の受講が前提になる検査もあるので、選考日程が決まっているなら問い合わせで確かめます。
検査を選考フローのどこに置くかは、採用フローの全体像をゼロから整理を参考に決めてください。
導入で増える負担:費用より見えにくいのは自社の作業時間
適性検査の導入で見落としやすい負担は、費用よりも、受検案内・督促・採点・読み合わせにかかる採用企業側の作業時間です。
この章の件数は、ミスゼロ総研編集部による2つの調査(2026年11月4日の39件と、2026年9月16日の28件)によるもので、母数と調査日が異なります。
適性検査の1名単価の目安と、無料で使える範囲
適性検査の1名単価の目安は、Web受検・標準プラン・税抜で中央値2,000円です。ミスゼロ総研編集部が2026年11月4日に適性検査39件の公式サイトを調べ、1件につき1つの単価(代表値)にそろえて数えた23件の中央値です。
この数字は1名あたりの受検料だけで、初期費用や年間の固定費は入っていません。固定費のある料金の形では、年の受検人数が少ないほど1名あたりの総額が上がります。
年に数名でも元が取れるかは、単価ではなく年間の総額で判断します。料金の形ごとの総額は適性検査の料金相場で試算しています。
無料の範囲も、条件を分けて見るべき点です。同じ39件のうち何らかの無料の入口を書いていたのは39件中28件でしたが、お試しではなく、ずっと無料で採用選考に使えるのは2件でした。
採用企業側の作業時間:分単位で公表していた検査サービスは28件中3件(2026年9月16日)
採用企業側の作業時間を分単位で公表していたのは、ミスゼロ総研編集部が2026年9月16日に公式サイトを調べた適性検査サービス28件のうち3件でした。公表値を30名分に掛けると、次の表になります。
| 検査 | 採用企業側の作業 | 1名あたり(提供元の公表値) | 30名の場合(編集部試算) |
|---|---|---|---|
| GATB(T版) | 採点・換算 | 約40分 | 20時間 |
| 内田クレペリン検査(オンライン判定) | 整理から入力まで | 約5分 | 2時間30分 |
| DPI | 自己採点 | 5〜10分 | 2時間30分〜5時間 |
ほかの検査が0分という意味ではなく、公表されていないだけです。受検案内の送付、受けていない応募者への督促、結果の読み合わせは、Web受検でもどの検査でもかかります。
公表がない検査は、商談で「1名あたり自社が何分使うか」を作業ごとに聞いてください。聞き方は、記事「適性検査の比較」の軸4で整理しています。
応募者の受検時間
応募者が受検に使う時間は、検査によって大きく違います。ミスゼロ総研編集部が2026年9月16日に各社公式サイトの公表値を確かめたところ、HCi-ASは約10分、SPI3-Gのペーパーテスティングは110分でした。
長い検査を選ぶなら、受検案内で所要時間を先に伝え、選考のどの段階で受けてもらうかを決めておきます。
適性検査の外部委託と個人情報:委託にあたれば同意は要らず、監督義務が自社にかかる
適性検査サービスに受検と採点を任せる形は、原則として個人情報保護法上の「委託」にあたります。そのため、委託された業務の範囲内なら、応募者の情報を渡すのに第三者提供としての同意は要りません。
その代わり、検査サービスを監督する義務(第25条)が採用する企業にかかります。
個人情報保護法の第27条第1項は「あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない」と定めています。同意が要らないのは、この原則に例外があるためです。
例外を定めているのが第27条第5項第1号です。利用目的の達成に必要な範囲で取扱いを委託することに伴う提供は、第三者提供にあたりません。
第25条は、委託する事業者に「委託を受けた者に対する必要かつ適切な監督を行わなければならない」と定めています。検査サービスに任せた後も、監督するのは委託した採用企業の側です。
個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)は、委託の例に「個人データの入力(本人からの取得を含む。)、編集、分析、出力等の処理を行うことを委託すること」を挙げています。応募者が自分で受検し、サービス側が採点・分析する形も、この例と同じ形です。
個人情報保護委員会のQ&Aは、依頼した側が個人データの内容を確認できる場合は「取扱いの委託をしていると解されます」としています。結果を自社の管理画面で見る検査は、この形です。
クラウドが委託にあたるかについて、同じQ&Aは「クラウドサービスを提供する事業者において個人データを取り扱うこととなっているのかどうか」を判断の基準にしています。契約で事業者が個人データを取り扱わないと定め、適切にアクセス制御をしている場合などは、Q&Aの回答では第25条の監督義務もありません。
採点や分析まで任せる検査サービスは、こうした保存だけのサービスとは扱いが分かれます。
会社の規模で義務は変わりません。ガイドラインは従業員100人以下の事業者を「中小規模事業者」と定義したうえで、安全管理措置は「その他の個人情報取扱事業者と同様に」講じなければならないとしています。
中小規模事業者で簡略化されているのは、安全管理措置の手法の例だけです。自社の契約や運用が委託として足りているか判断に迷う場合は、弁護士など専門家に確認してください。
契約前に検査サービスへ確かめること
ガイドラインは委託先の監督を、適切な委託先の選定、委託契約の締結、委託先における取扱状況の把握の3つで示しています。
| 確認すること | 根拠 |
|---|---|
| ガイドラインの別添の区分(組織的・人的・物理的・技術的安全管理措置など)ごとに、委託する業務で措置がとられているかを事前に確かめる | ガイドライン(適切な委託先の選定) |
| 委託する業務の範囲と、取扱状況を自社が把握する方法(定期的な報告や点検など)を契約に書く | ガイドライン(委託契約の締結) |
| 受検データを統計に加工したり、分析技術の改善に使ったりすることを契約で認めるかを決める | 個人情報保護委員会のQ&A |
| 契約した後も、契約に書いた内容が守られているかを確かめる | ガイドライン(委託先における取扱状況の把握) |
ガイドラインは、委託先は「法第23条が求める水準の安全管理措置を講じれば足りると解される」としています。比べる基準は自社の社内規程の水準ではなく、法律が求める水準です。
確かめ方は訪問に限られません。ガイドラインは「口頭による確認を含む」合理的な方法を例に挙げ、Q&Aも、委託する個人データの内容や規模に応じた方法で「足りるものと考えられます」としています。
契約後の把握については、ガイドラインが、定期的に監査を行う等により契約の内容の実施の程度を調べ、評価することが望ましいとしています。検査サービスの約款で済ませる場合も、Q&Aは、約款を読んで安全管理が図られると判断できれば、必ずしも追加の覚書までは要らないとしています。
受検データの統計加工や分析への利用は、契約の書き方で結論が変わる項目です。ガイドラインは、委託先は「委託された業務以外に当該個人データを取り扱うことはできない」としています。
範囲の外で受検データを統計に加工し、検査サービスが自社のために使うことはできません。委託の内容と関係のない自社の営業活動等に使う場合は、Q&Aで委託に該当しない場合の事例に挙げられています。
一方で、委託元の利用目的の達成に必要な範囲内なら、委託先が分析技術の改善に使える場合もあります。Q&Aもこの点は「個別の事例ごとに判断することになります」としているので、契約書と規約で受検データの使い道がどう書かれているかを、申し込む前に読んでおきます。
障害のある応募者への配慮:申し込む前に検査サービスへ問い合わせる
障害のある応募者から申出があれば、過重な負担になる場合を除き、障害の特性に配慮した措置を講じる義務を負うのは採用する企業です。障害者雇用促進法上、検査サービスにこの義務はかかりません。
根拠は障害者雇用促進法です。第34条は、募集・採用で障害者に均等な機会を与えることを事業主に求めています。
第36条の2は、応募者からの申出により、障害の特性に配慮した必要な措置を講じなければならないと定めています。ただし「事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときは、この限りでない」というただし書きつきです。
合理的配慮指針(平成27年厚生労働省告示第117号)は、視覚障害のある応募者への配慮の例として「採用試験について、点字や音声等による実施や、試験時間の延長を行うこと」を挙げています。
指針の別表の事例は、「多くの事業主が対応できると考えられる措置の例」として示されたものです。指針は、措置によっては準備に時間がかかるとして、応募者に「時間的余裕をもって事業主に申し出ること」を求めています。
そこで、検査サービスの公式サイトで配慮の手段を確かめられるかを数えました。ミスゼロ総研編集部が2026年11月4日に39件を調べたところ、配慮の手段まで書いていたのは39件中1件でした。
試験時間の延長に触れていたのは39件中0件です。Web受検(受検者が自宅などで受ける方式)での配慮に触れていたものも0件でした。
調べたのは、商品・料金ページと、そこからたどれるFAQ・サポート・受検者向けのページです。障害や配慮、延長などの語で抜き出し、当たった箇所を1件ずつ読んで次の4つに分けました。
| 区分 | 件数 | 該当 |
|---|---|---|
| A 具体的な手段まで書いている | 1件 | 内田クレペリン検査 |
| B 相談に応じる旨だけ | 1件 | SPI3(テストセンター受検に限った記述) |
| C 記載を見つけられなかった | 36件 | AとB、Dを除くすべて |
| D 到達できなかった | 1件 | アッテル(ページの本文を取得できなかった) |
この39件は、国内の適性検査の全体でも無作為抽出でもありません。ダイヤモンド社の検査が8件を占めるので、同じ39件を提供元の数(28社)で数え直すと、具体的な手段まで書いていたのは28社中1社、相談窓口だけが1社です。
Cの36件は、公開ページに書かれていなかったというだけです。対応していない、延長できないという意味ではなく、ログイン後のマニュアルや個別の問い合わせでは対応している可能性があります。
Aの内田クレペリン検査も、検査サービスが代わりに配慮してくれるわけではありません。提供元は点字の検査用紙を用意しておらず、「検査用紙を拡大コピーすれば見えるようであれば、受検できます」と案内しています。
拡大コピーで受検させる場合は、事前に提供元への相談を求めています。この手順は紙の検査を企業側の検査官が実施する前提で書かれており、配慮を実際に行うのは、受検の場を用意する採用企業の側です。
BのSPI3は、テストセンター受検について「一定の条件下でサポートさせていただいております」と案内しています。Web受検での配慮を示したものではありません。
申し込む前に、Web受検で時間を延長できるか、紙や会場での受検に切り替えられるかを問い合わせておきます。申出を受けてから調べ始めると、選考の日程に間に合わないことがあるためです。
検査サービスが延長や切替えに対応できないとき
検査サービスが対応できなくても、配慮の義務がなくなるわけではありません。合理的配慮指針は、どの措置を講ずるかについて応募者と「話合いを行うこと」を求めています。
希望の措置が過重な負担にあたるときも、指針は、応募者との話合いのもとで「過重な負担にならない範囲で、合理的配慮に係る措置を講ずること」としています。実施できない措置があれば、そのことを応募者に伝えるのも事業主の役目です。
過重な負担にあたるかは、事業活動への影響の程度、実現困難度、費用・負担の程度、企業の規模、企業の財務状況、公的支援の有無を総合的に勘案して個別に判断します。迷う場合は、労働局や専門家に確認してください。
受検案内から削除まで:応募者に示すことと、不採用者の結果の扱い
適性検査の受検の目的は、インターネットなど適切な方法で応募者に示します。不採用者の結果は、使う必要がなくなったら遅滞なく消去するよう努め、消す時期は自社で決めて受検案内にも書いておきます。
受検案内で目的を示す方法
職業安定法の第5条の5は、業務の目的を明らかにして求職者の個人情報を収集するよう、求人者や労働者の募集を行う者に求めています。示し方について定めたのが同法施行規則第4条の4で、「インターネットの利用その他適切な方法により行うものとする」という規定です。
書く場所としては、受検案内のメール、応募フォーム、採用ページが考えられます。応募者が受検の前に読める場所であることが条件です。
目的の範囲にも決まりがある点に注意してください。厚生労働省の指針(平成11年労働省告示第141号)は、目的の範囲を超えた収集・保管・使用への同意を、応募の条件にしないよう定めています。
同じ指針は「個人情報の保管又は使用は、収集目的の範囲に限られること」としています。選考のために取った結果を配属にも使うなら、受検案内の段階でその目的も示しておくことが前提です。
受検案内に書く項目の詳細は、記事「適性検査の比較」の「受検案内に書く項目」で整理しています。
不採用者の結果を消す時期と、開示を求められたとき
利用する必要がなくなった個人データを遅滞なく消去するのは、個人情報保護法第22条が定める努力義務です。個人情報保護委員会のガイドラインも同じ内容を示しています。
職業安定法に基づく厚生労働省の指針(平成11年労働省告示第141号)も、収集目的に照らして保管する必要がなくなった個人情報を破棄・削除する措置を求めています。導入の時点で確かめておきたいのは、管理画面から結果を消せるかどうかです。
Q&Aは「個人情報保護法では、個人情報の保存期間や廃棄すべき時期について規定していません」としたうえで、「遅滞なく」は必要以上に長期にわたらないようにすることだとしています。法律に期間の定めが無いので、消す時期を決めるのは自社です。
同じQ&Aは、データ管理のサイクルなど「実務上の都合に配慮することは認められます」としています。採否の通知や、再応募を受け付ける期間の終わりなど、何をきっかけに消すかを決め、受検案内にも書いておきます。
再応募との関係では、ガイドラインが「採用に至らなかった応募者の情報について、再応募への対応等のための合理的な期間が経過した後に、本人が利用停止等を請求した場合」を事例に挙げています。具体的に何か月を合理的な期間とするかは示されていないので、期間を決めるときは専門家に確認してください。
応募者の結果が自社の保有個人データにあたれば、本人から開示を求められることがあります。
Q&Aは、全部または一部を開示すると「その業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合」に当たるとして開示しないことが想定される事項を、あらかじめ定めておくことが望ましいとしています。
この回答は「人事評価や選考に係る個々人の情報」を含む雇用管理情報についてのもので、周知の相手は従業者とされています。開示しないでよいのは法律が定める例外に当たる場合に限られるので、応募者の結果をどこまで開示するかは請求を受ける前に整理し、専門家に確認してください。
不採用を伝えるときの文面は、お見送り連絡・選考フィードバックの書き方で解説しています。
よくある質問
適性検査を導入している企業はどのくらいありますか
ミスゼロ総研編集部が2026年11月4日に労働政策研究・研修機構と内閣官房の企業向け調査を当たった範囲では、企業の適性検査の実施率を集計した公的な統計を確認できませんでした。民間の調査の数字があっても、調べた企業の範囲は調査ごとに違うので、導入するかは他社の割合より、自社が何を測り結果を何に使うかで判断してください。
従業員が少ない会社でも、検査サービスの監督は必要ですか
必要です。個人情報保護委員会のガイドラインは従業員100人以下を中小規模事業者と定義していますが、安全管理措置はほかの事業者と同様に講じなければならないとしています。
申し込んでから何日で使えますか
検査によって違い、公式サイトで確かめられないものもあります。ミスゼロ総研編集部が2026年9月16日に適性検査サービス28件の公式サイトを調べたところ、申込みから利用開始までの日数を書いていたのは28件中11件でした。
内田クレペリン検査のオンライン判定のように、初回の講習会の受講が前提になる検査もあります。日数の明細を整理したのは、記事「適性検査のおすすめは自社の条件で決まる」です。
無料で導入できますか
採用選考にずっと無料で使えるものは限られます。ミスゼロ総研編集部が2026年11月4日に39件を調べたところ、何らかの無料の入口を書いていたのは39件中28件で、お試しではなく採用選考にずっと無料で使えるのは2件でした。
適性検査サービスの会社が、預けた受検データを自分たちの統計や分析に使ってもよいですか
委託された業務の範囲を超えて使うことはできません。個人情報保護委員会のQ&Aは、範囲外で統計に加工し、委託先が自社のために使うことはできないとしています。
委託元の利用目的の達成に必要な範囲内なら、分析技術の改善に使える場合もあります。どこまで認めるかは、申し込む前に契約で決めておきます。
障害のある応募者から、適性検査の時間延長を求められたら誰が対応しますか
対応する義務を負うのは、適性検査サービスではなく採用する企業です。障害者雇用促進法第36条の2は、応募者からの申出があれば、過重な負担にならない限り障害の特性に配慮した措置を講じるよう事業主に求めています。
Web受検で時間を延長できるか、紙や会場での受検に切り替えられるかは、申し込む前に検査サービスへ問い合わせてください。
まとめ:導入前に決める3つと、申し込む前に確かめる3つ
導入前に社内で決めるのは、次の3つです。
- 採用基準のうち、検査で測る項目
- 結果を選考の資料にとどめるか、配属にも使うか
- 不採用者の結果を、何をきっかけに消すか
候補を絞ったら、各社に次の3つを問い合わせます。
- 安全管理措置と、委託する業務の範囲(受検データの統計加工や分析への利用を含む)
- 契約した後に、取扱状況をどう把握するか
- Web受検で時間を延長できるか、紙や会場での受検に切り替えられるか